今回のテーマは、住民票シリーズ第5弾「住民票を移すことができない施設に入所した場合でも軽減制度などのメリットが受けられた事例」です。

藪内）一般的に病院や、在宅復帰を目標にした老人保健施設は、住民票を移すことを断られる場合があります。

髙橋）夫婦間は基本的に世帯分離もできないですよね。この場合は、住民票を移すことによるメリットを受けることができないのですか？

藪内）前回、夫婦の一方が課税者、もう一方が非課税者の場合には、介護施設に住民票を移す方が費用的なメリットがあるとお伝えしました。

〔参考〕
➤【注意】どっちがいい？住民票を施設に異動する場合のメリット・デメリット

住民票を移せない施設に入所などの場合には、夫婦間の世帯分離が特別に認められるケースがあります。

髙橋）そんなことができるのですか？

夫婦間の世帯分離ができた事例

藪内）実際にあった栃木県の70代のご夫婦の事例です。

旦那様は年金が250万円程度の課税者で、奥様は年金が70万円程度の非課税者でしたが、誤嚥性肺炎（＊）をきっかけに奥様が寝たきりの状態になりました。退院の見込みはなく、医療費もかなりかかるため、ご相談がありました。

＊ 誤嚥性肺炎とは、本来気管にはいってはいけない物が機関に入り（誤嚥）、そのために生じた肺炎。

髙橋）旦那様が健康であれば、世帯分離した方が費用的にメリットがありそうな事例ですね。

世帯分離できると

藪内）世帯分離により、高額療養費の限度額や奥様の国民健康保険料、介護保険料が下がり、年間30万円～50万円の削減が見込めました。

〔参考〕
➤【5分でわかる】介護保険料は安くなる？世帯分離のメリット・デメリット

髙橋）30万～50万円！それは大きいですね！

世帯分離へむけての手続き

藪内）まず、退院が見込めないという病院に

住民票を置かせてもらえないかを旦那様から聞いてもらいましたが、案の定、断られてしまったそうです。

髙橋）長期の入院であっても、病院に住民票を異動するのは難しそうですよね。

藪内）でも、介護病棟があるような病院は、実際に住民票を置かせてくれることもあるんです。

髙橋）そうなのですね。病院に聞いて、だめだった場合はどうするのですか？

夫婦間の世帯分離へのポイント

藪内）夫婦間での世帯分離です。普通に手続きをしたのでは、「夫婦で世帯分離はできません」と断られてしまいます。実際に、私が勤めていた役所でも、基本的には離婚調停中でなければ断っていました。
そこで、旦那様から役所に

「住民票の置けない病院に長期入院中で、退院の見込みがない」という申立書を提出

してもらいました。夫婦間の世帯分離ができたポイントは

「病院に住民票を置くことを断られたという事実」と

「在宅復帰の見込みがない」

という２つの要因があることです。

髙橋）なるほど！しっかりした要因があれば夫婦間の世帯分離も認められるのですね。このご夫婦は世帯分離をしてどのようなメリットが受けられたのですか？

藪内）世帯分離を行った後に国民健康保険課に行っていただき、入院時の医療費や食費が軽減される「限度額適用・標準負担額減額認定証」を発行してもらうことができました。保険料は自動的に翌年度から下がることになります。

髙橋）それはよかったですね！

まとめ

藪内）すべて自治体の判断とはなりますが、実際には別居している状態ですので、夫婦間での世帯分離も認められるケースがあるということを皆様にも知っていただければと思いました。

～ ゆるっとかいご　説明 ～

介護する家族を応援する介護情報チャンネルです。介護にかかる費用や、介護施設、認知症、相続のことなどを、はじめての方にも分かりやすくお伝えします！