今回のテーマは「施設に住民票を移した場合の費用面におけるメリットやデメリット」です。

入所した施設に住民票を移すかどうかを考える際の参考にしてください。

藪内）ご夫婦で一緒の世帯になっている方が、一方の施設入所を機に住民票を施設に移す場合、費用面においてメリットやデメリットが起こる可能性があります。

藪内） 原則、夫婦は世帯分離ができないのですが、一方が施設へ住民票を移すことによって世帯分離をすることができます。

メリットがあるケース

髙橋）夫婦には、「課税世帯」、「非課税世帯」などあると思いますが、どのような場合、メリットを受けられるのですか？

～夫が「課税者」で妻が「非課税者」のような場合～

藪内）例えば、夫が「課税者」で妻が「非課税者」のような場合です。

どちらかが施設に入所して住民票を施設に移したら、同一世帯だった夫婦の住民票は一人ずつの別世帯になります。妻は「課税世帯」から「非課税世帯」に変わりますので、介護や医療の軽減制度を利用することができるようになります。

髙橋）どのような「軽減制度」が利用できるようになりますか？

藪内）例えば、「高額介護サービス費」の限度額が44400円から15000円または24600円に下がります。

介護保険料も翌年度からにはなりますが、下がります（介護保険料の決まり方）。医療では負担割合が下がったり、入院時の医療費や食事代が軽減される「限度額適用・標準負担額減額認定証」が受けられたりします。

髙橋）非課税世帯になることで、色々な「軽減制度」が受けられる

のは、かなりのメリットですね。

メリットあるケースのデメリット

藪内）ただし、世帯分離により、非課税世帯になった場合でも、特養や老健などで居住費や食費が軽減される「介護保険負担限度額認定証」は、夫婦のどちらか一方が課税されていれば対象外のままなのでご注意ください。

髙橋）夫が課税者で妻が非課税者というご夫婦は多いケースなので、

一方が施設に入った際には住民票を移すことを検討した方が良さそう

ですが、デメリットはないのですか？

デメリットがあるケース

藪内）デメリットは、「高額療養費」や「高額介護サービス費」、「高額医療・高額介護合算制度」など、世帯で利用した医療費や介護サービス費を合算して、超えた分が還付される制度においては、

「世帯分離」をすると合算されなくなり、分離前よりも還付される額が小さくなったりする場合があります。

髙橋）夫婦共に入院費や介護費用がかかっている場合じゃなければ、影響はないということですね。

藪内）そうです！世帯分離をした後に、夫婦共に介護が必要になるなど状況が変わった時には、住民票を再度異動させることが可能です。

また、住民票が別世帯になると、住民票を取得するのにも委任状が必要になったりと、役所での手続きなどに手間がかかったりしますが、手続きできないわけではないので、大きなデメリットと捉えなくてよいかとは思います。

～夫婦ともに「課税者」である場合や、夫婦ともに「非課税者」である場合 ～

髙橋）夫婦ともに「課税者」である場合や、夫婦ともに「非課税者」である場合は、メリットやデメリットはないのですか？

藪内）非課税世帯になることで新たに軽減制度が利用できるようになるなどのメリットが得られるので、

夫婦ともに「課税者」である場合や、夫婦ともに「非課税者」である場合は、住民票を施設に移すことへのメリットは受けにくいです。

むしろ、分離することで、合算制度などが受けられなくなるので、デメリットの方が大きいと思われます。

まとめ

髙橋）ポイントは、住民票を異動することで夫婦の一方が「非課税世帯」になるかどうかということですね。

藪内）個々のケースによって例外はありますが、

一般的には、

夫婦ともに課税者、もしくは非課税者である場合には、住民票は自宅のまま動かさず、

夫婦の一方が課税者、もう一方が非課税者の場合には、施設に住民票を移す方が費用的なメリットがある

と考えます。

髙橋）住民票の異動は複雑なところがあるので、次回は藪内先生に事例をお伝えしていただきます。

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