今回のテーマは「認知症になると何も出来なくなってしまうという誤解」です。

認知症の人の心を伝える、きらめき介護塾の渡辺先生にお話しいただきます。

認知症の誤解

渡辺）「認知症になると何も出来なくなる」、そう思っている人も、まだまだ多いような気がします。

実は、ちょっとした関わり方のコツを知らないと、“何も出来なくなったように見えてしまう”のが認知症の人の特徴です。

[事例①]

渡辺）髙橋さん、永井さん、お二人は、お仕事が終わったら、家に帰ると思いますが、家に帰ったら、何をしますか？

永井）回覧板を回します！

髙橋）私は洗濯物を取り込みます！

渡辺）どうしてお二人はそれをしようと思うのですか？

永井）今朝、回覧板が届いていたので。

髙橋）出掛ける前に、洗濯物を干してきたので。

渡辺） お二人は、お仕事に来る前に“回覧板が届いていた”、“洗濯物を干してきた”ということを、《今も覚えている》から、家に帰ったら、回覧板を回したり、洗濯物を取り込んだりするのですよね！

私達は“少し前に自分が何をしたかを覚えている”のです。
だからその記憶を元に、今から何をするかを決め、行動ができるのです。

でも認知症になると、“自分がしたことを覚えていないから、今から何をしたらいいかがわからない”のです。

そして自分がやらなきゃいけないことを、なんとか思い出そうと、家中いろんな場所をウロウロする姿をみて、“認知症になると何も出来なくなってしまう”と、誤解する人がいるのです。

ウロウロしてしまう理由

渡辺）でも、お二人だって家に帰って何をするか決まっていなかったら、「この部屋ですることなかったかな？」と、いろんな部屋を覗きながら考えることってありませんか？

永井・髙橋）あります。

渡辺）私達だって普通にやっているのです。でもそれを認知症の人がすると、問題だ！と感じてしまうのは悲しいですね。

どう関わればいいのか？

渡辺）ただ、何をしたらいいのかわからないなら簡単です！

「回覧板を回してください」、「洗濯物を取り込んでください」と、声をかけてあげることで出来る人がたくさんいるのです。

認知症の人は

渡辺）でも、やっぱり認知症があるので、皆さんと違うことが1つだけあります。
それは何かというと。

[事例②]

渡辺）たとえば、髙橋さん、永井さん①～③のことをお願いします。

「まず、洗濯物を取り込んでもらって、あと、お花の水もお願いします。終わったら、犬の散歩、お願いしてもいいですか！？」

お願いした方は、どこかに行ってしまいました。

一人残され「あれ、私、何をすればよかった？」となると思いますが、思い出せますか？

永井）お願いされたことは、“洗濯物を取り込んで、お花に水をあげて、犬の散歩に行くことですよね！

渡辺）お二人は、一度に沢山のことを言われても“相手の言ったことを覚えられる”ので、それを思い出し順番に行うことが出来きます。

しかし、認知症になり“覚えられなくなる”と一度に沢山のことを言われてしまうと、覚えられず自分が何をしたらいいのか分からなくなります。

まとめ

渡辺）認知症の人に声をかける時に気を付けることは、“一つのことが終わってから、次の声をかけること”です。

“一つ一つ声をかける！”という、ちょっとした心遣いで認知症の方も、今までどおり普段の生活の中で出来ることがいっぱいあります。

認知症の特徴を理解していないと、認知症の人が何をしたらいいか一生懸命考えながら、家中をウロウロする姿を見て、「もう何にもできなくなってしまった」と誤解してしまうのです。

私たち一人ひとりが、大切な人の心を理解できるようになりたいですね。

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