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事例を交えながら、注意点を藪内先生にお話しいただきます。
藪内)遠距離介護が難しくなり、自宅近くの施設に親を呼び寄せることもあると思います。その際に、住民票はどうしたらいいのかなど、気を付けていただきたいポイントをお伝えします。
横浜市に住む子供が札幌市に住む81歳の母親を横浜市の特別養護老人ホームに呼び寄せることにしましょう。
髙橋)施設に入所するので、住民票を「入所施設に移すのか」、「お子様のご自宅に移すのか」で手続きが変わりそうですね!
藪内)はい。まず、特別養護老人ホームや有料老人ホームなどの住民票をおける施設に住民票を移す場合は、「住所地特例」という制度に該当して、お母さまがいままで住んでいた札幌市の介護保険が継続します。
髙橋)「住所地特例」が該当するということは、住民票は横浜市に異動しても、介護保険の保険者は札幌市のままになるということですよね。
参考:【5分でわかる】施設に入ったら住民票はどうしたらいいの?
藪内)はい。その通りです。「住所地特例」制度を受けるメリットとしては、札幌市の介護保険が継続するので、介護認定を改めてする必要がなく、また保険料の年金天引きも継続されるので、手続きが楽ということです。デメリットとしては、今後も認定の更新や軽減制度の手続きなどを札幌市に申請しなければならないということです。
髙橋)その手続きは郵送でもできるのですか?
藪内)はい、できます。ですが、施設に住民票がある場合、介護保険関係や健康保険関係など札幌市からの重要な郵送物が施設に届いてしまいます。
髙橋)それは困る方もいらっしゃると思います。自治体からの書類を家族の元に直接届くようにする方法はありますか?
藪内)介護保険担当課や後期高齢者医療保険担当課へ「送付先変更届」を提出しておくと、住民票所在地以外の家族宅などへ直接郵便物を送ってくれます。
髙橋)そんな手続きができるのですね!郵便局の転送手続きの場合は、毎年更新が必要ですし、転送に時間もかかってしまうので重要な書類が直接届いてくれるのは安心ですね。
藪内)次に、「住民票をお子様の自宅に移す場合」です。お子様の自宅に住民票を移すと、介護保険の保険者は札幌市から横浜市に変わります。
髙橋)この場合は、介護保険の認定が切れてしまうので、転入日から14日以内に介護認定の引継ぎを行わないといけないのですよね。
藪内)お子様の自宅に住民票を移す際には、世帯分離をすることをお勧めします。つまり、お子様とは住所は同じですが、住民票上は別世帯で、お母様も世帯主になるということです。
参考:【必見】世帯分離を考えよう!非課税世帯はこんなにお得!医療費負担額や入院時の食事代の軽減!
髙橋)扶養に関しての手続きはどうしたらいいですか?
藪内)扶養には「健康保険の扶養」と「税金の扶養」があります。要件が全く違うのですが、混同して考えてしまう方がたくさんいらっしゃるので、健康保険の扶養と税金の扶養の違いはこちらをご覧ください。
まず、81歳のお母様を健康保険の扶養に入れることはできません。75歳になると誰もが後期高齢者医療保険制度に移行しますので、すでに75歳を過ぎている方は健康保険の扶養は考える必要がないということです。
髙橋)そうなんですね。では「税金の扶養」はどうでしょうか?
藪内)お子様が施設に入ったお母様の面倒を見ているので、「老人扶養」の控除が申告できます。ただし、自宅に住民票を置いた場合でも、「同居老親」の控除は受けられません。税金の扶養は実態で見ますので、体が施設にあれば、同居扱いにはならないということです。
髙橋)お母様が要介護認定を受けている場合、障害者控除も申告できる可能性があると思いますが、それはどうすればよいのでしょうか?
藪内)お母様が役所で「障害者控除対象者認定書」を取得できれば、お子様が「高齢の親を扶養している」のではなく「障害を持った高齢の親を扶養している」として、お子様がお母様の障害者控除も申告できるようになります。
髙橋)「障害者控除対象者認定書」の手続きは横浜市でできるのですか?
藪内)「障害者控除対象者認定書」は年末時点で要介護認定を受けている市区町村でないと発行できません。
住所地特例の場合は、過去の分も今後の分も札幌市に申請することになりますが、お子様の自宅に住所を移した場合は、転入した年以降は横浜市、転入より前の年の分は札幌市で申請することになります。今回の動画で障害者控除対象者認定書について初めて知ったという方は、過去5年分は認定書も遡及して申請できますので、住民票所在地に申請してみてください。
住民票を「入所施設に移すのか」、「お子様のご自宅に移すのか」それぞれの手続きにおいて、気を付けるポイントがわかりました。
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この記事の執筆者
髙橋佳子(たかはし よしこ)
株式会社ゆるっとかいご 代表取締役
自身の親の介護を活かし「かいごに楽しさをプラスする」をテーマに活動。
介護離職防止コンサルタントとして、企業で働く人の「仕事と介護の両立」を支援。
著書:親と子の新しいコミュニケーションツール『親ブック』
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