嚥下（飲み込み）をわかりやすく解説③【誤嚥について】

一日に意識せずとも数百回行っているとされる飲み込む動作が「嚥下」です。

その嚥下反射がうまく機能しない状態「嚥下障害」により、「誤嚥」は発生しやすくなるとされます。

高齢者の肺炎の７割を占めるとされる「誤嚥性肺炎」と、その誘因にもなる「誤嚥」について解説していきます。

誤嚥（ごえん）とは？

咀嚼（そしゃく）を行い、咽頭・食道を通り胃に運ぶまでの「一連の動作」のいずれかに不具合が生じた状態を言います。「嚥下障害」により、発生しやすくなる症状です。

具体的には・・・・

□「嚥下（飲み込む動作）の際に食道では無く、本来塞がれる気道に食べ物や唾液が誤って入る」現象を指します。

□嚥下は、一日中数百回行う動作の為、食事中以外でも安静時や飲水時、就寝中に誤嚥する可能性があります。

誤嚥したらどうなる？

①顕性誤嚥：通常、誤嚥した際には気管の外に異物を追い出す防御反応が働き、その結果としてむせる現象が発生します。しかし、この防御反応が低下した際に、むせのない誤嚥である「不顕性誤嚥」が発生します。

②不顕性誤嚥：誤嚥してもむせずに誤嚥した食べ物・唾液が気管にとどまった状態。呼吸苦が起きる場合もある。食事外の状態でも、例えば睡眠中に唾液等の誤嚥を繰り返しているとされます。頻繁な体温上昇や痰が絡み、一時的に声が変化する等も誤嚥を疑うサインとなります。

誤嚥による影響は？

①窒息（気管内に食べ物や異物が詰まる現象）の誘因となる

②誤嚥性肺炎の誘因となる

誤嚥性肺炎とは？

誤嚥が原因で、気道に侵入した唾液、食べ物等に付着した細菌が、肺に至る事で炎症が起きる事を言います。経管栄養の方であっても、唾液等の誤嚥を契機として発症しうるとされています。

誤嚥性肺炎の原因

①誤嚥した際にむせずに気道から異物を追い出さない不顕性誤嚥が起こる

②口腔ケアが不十分な為に、細菌が増殖しやすくなっている

③嚥下障害をきっかけとする食欲不振に陥り、低栄養や脱水といった症状を引き起こし、抵抗力等が下がった状態にある

唾液や食物が逆流するに伴って、気道に細菌が侵入した場合。胃酸や消化液で傷つけられた気道粘膜は治りにくい上に働きも悪くなり、再発しやすくなるとされます。

誤嚥性肺炎の症状

□一般的な肺炎同様に、発熱・激しい咳と黄色い淡、呼吸苦や肺雑音

（場合によっては、症状が顕在化しない場合も。）

□食事時間が目に見えて長い

□食後に疲労感を覚える

□飲み込みの不調・体重減少

□様々な物に対し意欲が湧かない

誤嚥を治療するには？

軽微なものでは、咀嚼や摂取方法の見直し、飲み込みやすくなる工夫（液体にとろみを混ぜる）等の嚥下指導が挙げられます。

誤嚥の程度によっては、嚥下機能改善手術や誤嚥防止手術といった治療も考慮されます。

誤嚥性肺炎の検査

嚥下造影検査（VF ）

バリウム等を用いて嚥下状態をＸ線検査下で観察する。

嚥下内視鏡検査（ＶＥ ）

経鼻で内視鏡を咽頭・喉頭に運び、機能を観察する。

治療の方法

□軽度な場合には、誤嚥が起こりにくい様に、食べ物の形態を工夫する

□嚥下障害の改善や誤嚥防止を目的として、手術治療が行われることもあります

（声を残したまま、経口摂取を可能にしようとする嚥下機能改善手術）と、

（気道を分離して、完全に誤嚥を失くす事を重視した誤嚥防止術）に大別されます。

まとめ

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