嚥下（飲み込み）をわかりやすく解説①【摂食嚥下と嚥下障害】

私たちが食べる際にする動作である「嚥下」（飲み込み）と、関連する障害や疾病について、知る事で、食事の大切さを再確認してみませんか？

最近むせやすいと感じる事はありませんか？

そもそも食事の動作とは？

□摂食嚥下（せっしょくえんげ）・・・

今から食べる物を認識し、口に持っていき、咀嚼（そしゃく）し※、咽頭・食道を通り胃に運ぶまでの「一連の動作」を指します。この動作は5段階で実施されます。

□嚥下（えんげ）・・・

摂食嚥下の中で、後半の３段階である口腔期・咽頭期・食道期の

「食べ物を飲み込み、胃へと運ぶ」動作を指します。

摂食嚥下の５段階とは？

①先行（認知）期

□食べ物の形や色、においを認知。

□五感を駆使して食べ物を認識し、記憶の中の類似物の味や硬さを想起し、条件反射的に唾液が分泌され、食事の準備が開始。

②準備（咀嚼）期

□食べ物を取り込み、唾液と共に咀嚼し、舌で食塊（唾液と入り混って嚙み砕かれ小さくなり、飲み込み可能な食べ物のまとまり）を形成する時期

③口腔期

□食塊を口腔から咽頭へ主に舌で移送する時期。

□舌は、その辺縁を硬口蓋（前歯の裏）に押し付け、送り込むのに重要な働きを行う。声帯は内転し、仮声帯は閉鎖する。

□食塊が奥舌の方に移送されてくると、軟口蓋が上り、鼻腔への逆流を防ぐ。

□咽頭（口腔から食道の上端：食物を食道に送る通路と、空気を気管に送る通路が交差する場所）の入り口あたりの部分で嚥下反射が促され、飲み込む（嚥下）。

④咽頭期

□咽頭を通過する時期。

□食塊の通過時には、咽頭の中間あたりにある軟口蓋（上あごの奥に位置する比較的軟らかい部分）が鼻腔を閉鎖し、喉頭（のどぼとけ）は挙上する。

□食塊が咽頭に入ると、無意識で咽頭に蠕動運動（ぜんどううんどう：消化管などの管状の臓器が、その内容物を波状に送る基本的な運動形式）を生じる

□食べ物が食道に入る時、喉頭蓋が器官の入り口を（喉頭）を閉鎖する事で気道侵入を防ぐ。

□摂取する食べ物や量等が、無意識で実行される嚥下反射のタイミングに影響。この間、0.5～1秒程度。

⑤食道期

□食塊が食道入口部から胃へ移送される時期。咽頭の収縮に伴い、食道入り口にある輪状咽頭筋は弛緩する。

□そのすきに食道に入り込むと、括約筋が閉鎖し、蠕動運動、重力、腹腔内圧によって、胃へと移送される。

□食道下部（胃との境）には、下部食道括約筋があり、胃からの逆流を防止。食塊が食道を通過するのは、物性により異なるが液体では3秒、固形物では8秒とされている。

嚥下障害とは？

上記の①～⑤の段階で、どれか一つでも正常に機能しない状態を指します。

誤嚥、誤嚥性肺炎、低栄養や脱水、窒息といった有害な現象の要因となりえます。

嚥下障害の具体的な症状

□食事中よくむせる（素早く流れる水分、汁物や水分に固形物が入った食べ物）

□食事時外にかかわらず突然むせる、唾液でもせきこむ

□飲み込みにくくなる為に、口の中に食べ物が残存する。（衛星状態が悪化）

□淡が絡みやすくなり、声がかれてガラガラ声になる

□水分摂取量が減少する（脱水を惹起する）

□発熱を繰り返す

□食べ物を口からこぼす頻度が上がる

□麺類等噛まなくてよいものを好んで食べるようになる

□食事の後に声がかすれる、ガラガラ声になる

□飲み込むことに苦労するため、所要時間が長くなる

□食べられる範囲が狭まり、食欲が減退し、 疲労感を覚えて、完食が難しくなる

□体重が減少する

嚥下障害を引き起こす原因とは？

器質的原因

摂食嚥下の一連の動作中、器官に構造上の不具合。滞りなく嚥下ができない状態

□口内炎や咽頭炎等の炎症

□先天性のもの

□嚥下を行う上で必要な物理的な外傷

□食物の通り道を塞ぐ腫瘍（がん等）

□疾患の治療等が逐次必要

機能的原因

加齢・疾病（脳梗塞や脳出血などの脳血管障害、パーキンソン・発達障害等）により、器官を運用する神経や筋肉に神経障害や麻痺等も含めた様々な問題が生じている状態。いずれもリハビリを要する

□嚥下障害の原因疾患は脳卒中が約６割を占めるとされます。

□麻痺等による嚥下反射の遅れにより、誤嚥を誘発します。

□舌も含めた各種筋力の低下、サルコペニア（咀嚼や嚥下等に必要な筋肉の減少）

□安静時の喉頭の位置が、低く下がった箇所に位置する為、喉頭を

より高く持ち上げる必要性があり、唾液や食物が気道に入りやすくなる

□歯の減少や、義歯の調整不足等による噛みつぶす力の減少

□食塊の形成、飲み込みを助ける唾液の性質と一日の分泌量の変化

精神心理的原因

心因性の疾患（うつ等）・認知症によるもの

□ノドの違和感、注意力や食事への意欲低下

嚥下障害による影響

□快適に食事を行えないことによる

１：栄養不足（低栄養→サルコペニア、フレイルと悪影響の連鎖）

２：食事に関して精神的なストレスを抱く

□水分摂取の機会が減り、脱水を引きおこす。

□誤嚥ひいては誤嚥性肺炎

嚥下（飲み込み）をわかりやすく解説【嚥下障害とその対策】へ続く・・・