今回のテーマは「家族信託と任意後見の違い」についてです。

今回は、元気なうちの対策「家族信託」と「任意後見」について 村山先生にその違いを聞いてみました。 どちらも同じようなタイミングでできる認知症になった時に困らないための 対策になります。

家族信託と任意後見の違い

村山）まず、表を見ながら説明します。

この表の中でお伝えしたいポイントが3つあります。

1. いつから効力が発生するか？
   家族信託の場合は自由に設定が可能です。通常は契約を結んだ、その日から効力を発生させる方が多いです。
   任意後見制度の場合は、契約した日からではなく、判断能力が衰えた日から発生します。判断能力があるままに、お亡くなりになられ場合は、効力が発生せず、後見人になる事無く終わります。
   
2. コスト（費用）について
   家族信託の場合は、初期費用がある程度必要となりますので、最低50万円くらいと考えてください。
   任意後見制度の場合は、初期費用が10～20万円ぐらいとなります。ランニングコストが掛かるケースがあります。先程の効力発生とリンクしますが、判断能力が衰えてしまった後は、必ず後見監督人が付けられますので、そちらの方に支払う報酬が毎年発生します。
   
3. 監督機関
   家族信託の場合は、特に監督する機関は定められておりません。
   任意後見制度の場合は、必ず監督人を定め、裁判所が監督します。判断能力が衰えた後、必ずつけられるという仕組みになります。
   

他の項目について

髙橋）質問なのですが、上記表に書いてある「遺言機能」が付けられるか？ とは何でしょうか？

村山）良いところに気付いて頂きました。
「遺言機能」と言うのは、財産を「誰に引き継がせたいか」という希望の事です。

家族信託の場合は、元気なうちに財産管理を任せる契約をします。自分が亡くなった後に、誰に財産を引き継がせるかを事前に決める事ができます。そして、その引き継がせたい人が亡くなった後、さらに次の人まで決める事ができるという、特殊な契約となります。これは遺言でもできない、「ニ段階以上の相続」が可能となります。

任意後見制度の場合は、相続とは関係が無いので、亡くなったら契約が終了します。もし遺言の機能が欲しければ、任意後見契約と一緒に遺言書を作る必要があります。

永井）初めて知りました。

「家族信託」と「任意後見」のどちらを選ぶか

永井）例えば、うちの場合は、実家があるだけなのですが、「家族信託」と「任意後見」のどちらを選べば良いでしょうか？

村山）それでは、次の表に当てはめて考えましょう。

1. 名義
   家族信託を選んだ場合は、名義が永井さん（子供）に代わります。
   任意後見制度の場合は名義の変更はありません。
   
2. 運用
   家族信託の場合は、信託契約の内容に従って自由に運用ができることになっています。比較的、自由度が高いです。
   任意後見制度の場合は、効力が発生した後ですが、裁判所がその人の財産を守る立場なので、積極的な運用はできません。「財産が減る行為はやめてください。」と監督されます。自由度は低いです。
   
3. 相続税対策
   家族信託の場合は、相続税対策として土地を活用して節税をしようという場合に向いています。
   任意後見制度の場合は、節税対策には向いていません。
   
4. 財産の引き継ぎ
   財産の引き継ぎに関しては、 家族信託は決められますが、任意後見制度は決められません。

永井）まだ私は、どちらが良いのか迷います。

村山）それでは、判断基準として、永井さんの家でアドバイスするなら、実家を売却して介護費用に充てたいという事なら、どちらでもできます。

任意後見では、裁判所に管理される事が問題では無いか？ がポイントになると思います。
親が元気であれば、親自身が実家を売却して介護費用にできるのですが、もしそうではなく親が認知症になり、子の出番が来た場合は、必ず監督人がつき報酬も毎年発生します。それを踏まえ決めて頂ければと思います。

髙橋）お家によって状況が違いますので、「どちらが良いか」一概に言えないという事ですね。

村山）そうなんです。「家族信託」が良い、「任意後見」が良いということではく、それぞれのお家で、何がしたいか？ という観点で目的に合わせて検討して頂ければと思います。

～ ゆるっとかいご　説明 ～

介護する家族を応援する介護情報チャンネルです。介護にかかる費用や、介護施設、認知症、相続のことなどを、はじめての方にも分かりやすくお伝えします！