今回のテーマは「寡婦控除」です。

「賢約サポート」を全国に広める活動をされている元行政職員の藪内祐子さんにお話ししていただきます。 あまり聞いたことのない制度になりますので、事例を交えながらお伝えします。

寡婦控除とは

藪内）『寡婦控除』とは、夫と死別または離別し、再婚していない女性が受けられる控除です。

「働いていたお母さま編」と「シングルマザー編」と分けてお伝えします。

髙橋）今回はまず、「働いていたお母さま編」をお伝えいただきたいのですが

お父さまがお亡くなりになっていて、お母様が働いていた方は必見です！

寡婦控除（働いていた方編）

寡婦控除の対象と手続き

藪内）お母さまが働いていた場合、ご自身の年金、老齢年金、とお父様の遺族年金を受けられていると思うのですが、このお母さまご自身の老齢年金が『課税』となっている場合があります。

髙橋）年金はどのくらいもらっていたら、課税になるのですか？

藪内）お母様の老齢年金が年間158万円を超えていれば、課税となります。扶養控除や障害者控除などを受けていないことが前提です。

髙橋）では、お母さまの老齢年金が年間158万円超えている場合は、寡婦控除の申告ができるのですね？

藪内）はい。年間所得が500万円以下という条件はありますが、それ以下の所得の方がほとんどだと思いますので、寡婦控除の手続きをおススメします。

髙橋）手続きをするには、お母様の年金金額を知る必要がありますね？

藪内）遺族年金はそもそも非課税になりますので、お母様の老齢年金の金額だけ確認してください。
例えば、同じ年金を180万円もらっていても、遺族年金80万、老齢年金100万の場合は非課税。遺族年金20万、老齢年金160万の場合は課税となり、寡婦控除の対象となります。

髙橋）老齢年金がいくらなのかは何で確認できますか？

藪内）老齢年金の源泉徴収票で確認できます。遺族年金はそもそも非課税なので、源泉徴収票はありません。

髙橋）老齢年金は金額にかかわらず源泉徴収票は発行されていますか？

藪内）はい！毎年1月の中旬ぐらいに届きます。年金事務所に問い合わせをしていただければ再発行も可能です。

▸源泉徴収票をなくしたとき｜日本年金機構 (nenkin.go.jp)

寡婦控除のメリット

髙橋）寡婦控除をするとどんなメリットがありますか？

藪内）まず、お母様が支払っている所得税や住民税が減額されます。老齢年金が年間245万円以下の場合は、住民税が非課税となり、医療や介護の軽減が受けられるようにもなります。

寡婦控除の事例

髙橋）何かイメージが湧くような事例はありますか？

藪内） 最近相談いただいた事例をご紹介します。

50代のお子様から80代の別居のお母様の入院費用について相談がありました。
お母様は元看護士で、老齢年金を200万円ほど受け取られていました。
老齢年金に対して税金がかかっていましたので、医療や介護に関する軽減も受けられない状態でした。
お話を聞くと、お父様が4年前に亡くなったとのことですが、寡婦控除の手続きなど全くされていませんでした。4年遡及して寡婦控除の申告をサポートさせていただいた結果、非課税になり、お母様の所得税・住民税が4年分還付になり、介護保険料が2年分減額され、非課税世帯への臨時特別給付金10万円も受け取ることができました。
さらに入院中の医療費や食事代が軽減される「限度額適用・標準負担額減額認定証」の対象にもなりましたので、医療費の負担が月10万円以上下がったととても喜んでいただけました。

髙橋）手続き一つでそんなに軽減が受けられるものなのですね！

藪内） 寡婦控除の手続きをすることでのメリットは例えば、

• 入院中の医療費や食事代が軽減される「限度額適用・標準負担額減額認定証」の対象となる。
• 介護保険料が減額される。
• 高額介護サービス費の自己負担限度額が下がる。
• 施設利用時の負担限度額認定証の対象（資産要件もあり）となる。

などといったことがあります。

髙橋）色々とメリットがありますね！

寡婦控除の手続きは遡って申請できる？

髙橋）今まで寡婦控除の手続きをされていなかった場合は遡れるのでしょうか？

藪内）税金の時効は5年ですので、5年は遡って手続き可能です。

これまで寡婦控除の申告をしているかどうかも源泉徴収票の「寡婦の欄」にチェックが入っているかで確認できます。

髙橋）お父様が他界されている場合は、お母様の老齢年金額を確認し、年金額が158万円超えている場合は、寡婦控除の手続きをしているか確認してください。

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