もの忘れとは？認知症と記憶能力について

認知症において、記憶能力に関する機能低下は「記憶障害」と呼ばれます。

これは脳細胞の変容や破壊等により生じる症状「中核症状」に該当します。

「もの忘れ」等誰にとっても身近な話題である「記憶」について知ってみませんか。

[目次]
◎認知症ともの忘れ
・一般的なもの忘れとは？
・認知症の「もの忘れ」とは？
◎記憶能力について
・性質が「記憶する内容」の場合、分類は？
・性質が「記憶する長さ」の場合、分類は？
◎まとめ

◎認知症ともの忘れ

一般的なもの忘れとは？

一般的なもの忘れ（生理的な健忘）については、加齢に伴って出現します。

要素としては、以下の通りです。

1. 社会で生活する上で支障が無い。
2. 体験したことの一部を忘れる。
3. もの忘れ自体を忘れていない。
4. 思い出すのに必要な情報さえあれば、再度思い出せる。
5. もの忘れが進行しない。

認知症の「もの忘れ」とは？

要素としては以下の通りです。

一般的な「もの忘れ」とは異なった症状となります。

1. 社会で生活する上で支障がある。
2. 体験したことの全てを忘れ、新しい事をおぼえにくくなる。
3. もの忘れ自体を忘れている。
4. 思い出すのに必要な情報があっても、思い出せない。
5. もの忘れが進行する。

1～5については、記憶する過程である「記銘」「保持」「想起」が適切に実行されない為に生じます。なお、認知症になる前の出来事については思い出す（想起）事が可能です。

その他の「もの忘れ」とは？

上記の他にも、欠乏症状・長期間強いストレスを感じた時・うつになった時・中毒症状にも、もの忘れの所見が見られる事になります。

◎記憶能力について

記憶とは？

記憶は、

１：記銘（新しく受けた情報を覚える事）
　　　↓
２：貯蔵（一定期間情報を保持する）
　　　↓
３：想起（情報を思い出す）

といった過程から成り立ちます。

記憶は、その性質によって分類が可能です。

性質が「記憶する内容」の場合、分類は？

A「陳述記憶」・・・言語的に記憶され、また想起されるモノ

①意味記憶：「○○は□□である」といった世間一般の様々な対象への知識が当てはまる。言葉の意味や、物体や現象や概念の説明等が例として挙げられます。加齢の影響を受けにくいとされます。

②エピソード（出来事）記憶：「○○分・時間・日・月・年前に□□を見た・言った・聞いた」といった個人的な出来事に関する記憶が当てはまる。経験自体とそれに関連する情報を併せて記憶します。意味記憶とは異なり、加齢の影響を受けやすいとされます。

B「非陳述記憶」・・・言語的に記憶せず、言語によって想起されないモノ

①手続き記憶：自動車の運転、スポーツ、音楽等のあらゆるジャンルで技能として習得した記憶を指します。加齢による影響を受けにくいと言われています。

性質が「記憶する長さ」の場合、分類は？

保持する時間によって種類は変わりますが、さらに心理学による分類と臨床神経学による分類があります。

A「心理学による分類」

①短期記憶：数十秒等の短い時間、その限定された容量での記憶を指します。

単純な事柄を短時間で覚える記憶を指します。これに関連して、ワーキングメモリーと呼ばれる短期間での複雑な記憶作業で用いられるものもあります（文章を認識しつつ、その前の文章も覚えておく等）

②長期記憶：永続的かつ容量が無限な記憶を指します。

B「臨床神経学による分類」

①即時記憶：記銘（新しく受けた情報を覚える事）した後、すぐに想起（情報を思い出す）され、また干渉されない（意識外に消えない）。数字の復唱に関する能力等も関係。

②近時記憶：数分より数日経過後に、他の認知作業の干渉の為一度記銘した後、忘れた情報を、再度思い出す機能

③遠隔記憶：近時記憶よりも、保持期間の長い記憶。近時記憶との時間の境目は曖昧とされる。

◎まとめ