「夢を諦めない時代に～出来ないことではなく出来ることを～」

フリーアナウンサー町亞聖さん

二子玉川ライズ内に地域の方々と介護や社会福祉の関係者が集い、学び合うことができる場として9月にオープンした「ロイヤル介護ぷらっとフォーム世田谷」。
そのオープンを記念するセミナーウィークで、9月10日にご登壇いただいたのは、フリーアナウンサーの町亞聖さん。 アナウンサーとして活躍しながら、私生活では18歳の時から両親の介護を続けて来られました。 それをきっかけに「介護や医療のことを伝える」をライフワークとされている町さんにお話いただきました。

母の介護から気づいた「諦めない」ということ

母の介護を10年、父の介護を5年、あわせて約15年、両親の介護に携わってきた中で、沢山勉強する機会をいただきました。医療・介護という領域の専門家の方も本日いっぱい来ていると思いますが、いつかは誰もが「当事者」になります。そんな中で、皆さんのヒントになるようなお話をお伝えしたいと思います。
私がはじめて「介護」に向き合ったのは、18歳のとき。当時、介護という言葉も知らない年齢でした。私が大学受験を控えた高校生のとき、40歳という若さで母がくも膜下出血で倒れたのです。そして、言語障害と右半身不随という後遺症を背負うことになりました。
しかも、直後に母は脳梗塞も併発し、一時は心肺停止の状態になりました。後に専門の先生とお話しているときに、「くも膜下の後に脳梗塞をされて、よく助かったね」と言われたことがあります。
そこから10年、母は障害と共に生きることになりましたが、母が助かったのは本当に奇跡であり、私にとっても多くの学びや気づきを与えてくれた母の車いすを押して過ごした10年は奇跡の時間でした。命をかけたくも膜下出血の手術中に、私達家族が願ったのは、どんな姿になってもいいから、ただただ生きていてくれさえすればいいということ。その願いを神様が叶えてくれたのだと思います。
今回のタイトル「諦めない」の中には、重度の障害を負っても“出来ること”があり役割があるということを、母が身を持って教えてくれましたので、こんな状態になったら生きる意味がないと悲観し諦めるのではなく「生きる」「生きていてほしい」という思いも含まれています。昨今、安楽死に関する議論が話題に上ることが出てきました。しかも、若い方の多くが治らない病気になり耐え難い苦痛がある場合は安楽死に賛成だという声も聞かれます。しかし、医師による薬の処方が必要な究極の医療依存である安楽死に簡単に「賛成」するというのは、思考停止になっているのではないか、と思うんです。その安直な思考、それこそが怖いと思います。たとえ不治の病になっても自分らしく前向きに生きている人たちがいることや寿命を全うすることが出来ることも私は知っています。もしかすると、そういう方たちは、限りある命を生き切るという、本当の命の輝きを見たことがないのかもしれません。
母が介護状態になった当時、父親は仕出し弁当の配送業をしており、3歳下の弟と、6歳下の妹の世話と家事は私の担当となりました。
兄妹はまだ幼くて当時は戦力にはならなかったけれど、振り返れば、この二人がいてくれたことが大きな支えになりました。この二人を社会人にするのが私の役目でしたが、何より私自身が母が病気になったからと人生を諦めたくなかった。二人に諦めない姿を見せたいという想いが私を頑張らせてくれました。

受験勉強しながら家事をやり母の病院にお見舞いに行って・・・何もかもが初めてで不慣れなことばかりで、最初の一年は実は全く記憶にありません。無我夢中だったからかもしれません。それまで、私自身、家のことは全くやっていませんでした。しかし、やらざるをえない状況になればやるものです。
家族が介護をする場合にぶつかる壁が必ずあります。それは、被介護者の元気なときの姿を家族は知っていますので、変わった姿を受容することがとても難しいからです。
私も、１年位は母が元気になる夢を何度も見ました。そして、夢から覚めて、目の前の厳しい現実に涙が止まらなくなる。ですが、嘆き悲しんでいても現実は変わりません。「今」を受け止めないと前へ進めないと思い、覚悟を決めました。

「できること」を数えていく

人間は口からものを食べないとこんなにも痩せてしまうものなのかということを母で経験しました。心肺停止になって母は　二か月ほど人工呼吸器をつけていました。自力呼吸が出来るまで、点滴だけで過ごしたためにがりがりに痩せてしまいました。頭部の手術だったため丸刈りで骨と皮だけになった母の姿は正直、目を背けたくなるほどでした。
また、数か月寝たきりだった母のリハビリのスタートは板に貼り付けられて、立位を保つという訓練でした。内臓がちゃんと起きるようにするためです。当時はまだベッドサイドリハビリという概念はなく、ある程度病状が落ち着いてからリハビリという流れでしたので、仕方がないことなのですが、その姿を最初に見た時は本当にショックでした。
今から３０年前の1990年なので、介護保険がない、バリアフリーという言葉もない、サービスエリアは皆トイレは和式という時代。障害を持つ人がまだとても生き辛い社会でした。介護も家族がやるのが当然でしたので、誰にも頼ることが出来ませんでした。また本当のリハビリは家に帰ってきてからが本番でした。家の中は本当にバリアだらけで、母にはたとえ時間がかかっても、自分の身の回りのことを自分でやってもらわなければなりません。
「出来ないことではなく出来ることを数える」という発想の転換を私はすることにしました。介護制度もお手本もなかったからこそ試行錯誤しながら“失敗してもいい”という気持ちで日々暮らすことが出来たと思います。
日本の介護は“やってあげる”という想いが強く過剰介護になりすぎていて、ついつい本人から出来ることを奪っているような気がします。最近はようやく自立支援という考え方が広がってきましたが、介護職員の方も忙しいので、つい自分でやってしまったほうが早いと、オムツをしてしまうというケースも多いと思うんです。
しかし「自分でできる」ように知恵を絞ってほしい。たとえば、ある施設ではオムツを使わずに自分でトイレに行けるようにするために、膀胱内の尿量がわかる「ゆりりん」という製品を使う工夫をしているところもあります。もし自分だったらトイレに行けるのにオムツをさせられているとしたらどんな気持ちになるでしょうか。

長年、認知症のケアに取り組んでいる竹内孝仁教授にお話しを伺ったことがありますが、竹内先生は単に水を沢山飲めと言っているわけではなく、水分と栄養をしっかり摂り、便通も良くし、体を動かして活動性を上げる、という当たり前のことを指摘しているのです。
母はたいていの家事はこなすことが出来るようになりました。例えば、洗濯も洗い物は私達がいれますが洗剤を入れてボタンを押すということは母は出来ますので毎日やってもらうようにしました。すると母は朝起きて洗濯機のところまで歩くというリハビリも出来るということに。他にも、朝食はパン食にして自分でパンを焼いてもらったりと、小さな工夫の積み重ねをしながら車いすの母と暮らしていきました。

「発想の転換」

一浪をして進んだ大学では、学業とともに母の介護とアルバイトに明け暮れる日々を送りました。当然、当時は遊びに行ったり、サークルに入ったり、留学もしてみたかった。友人がディスコに行ってナンパされたとか、そういう話を聞くのは正直辛かった。だから、介護の最初の一年はわざと友達と連絡をしませんでした。でも、今思えば、留学だって、遊びに行くことだって後でもできるんですよね。
一方で、埼玉にある障害者リハビリセンターへ母と行くのですが、当時、自分のような年齢の子がいるのは珍しかった。18歳で車椅子を押す経験ができるなんて、今思えばとても貴重な体験なわけです。「発想の転換」、これが私にとって魔法の言葉になりました。
発想の転換といえば、視点の転換も重要なことです。例えば、認知症の方を病院の診療室で診ているだけでは本当の“困りごと”は分かりません。ある在宅の先生がおっしゃっていたことがとても印象に残っています。
「以前、病院勤務のときは、患者さんが『眠れないんです』といえば、睡眠導入剤を出して終わりだった。しかし、いざ在宅になり、その人のお宅に行ったら、トイレが1階にあり、2階で寝ていらした。それで眠れない理由がわかった」と言うんです。
「そうか、トイレが気になって寝られないのだと」。そして、こうも思ったそうです。「このまま眠剤を出し続けていたら、朦朧として、2階から落ちていたかも知れない」。
つまり、診察室だけでは見えない、困りごとの原因は「生活の中」にあるということなんです。
認知症だからと決め付けずに困っていることの原因や理由を視点を変えて考えてみるということができれば、認知症の方もご家族も穏やかに過ごせたりするわけです。
あと、「大丈夫」という言葉があります。これも私は「魔法の言葉」だと思うんです。周りの人が本人に「大丈夫だよ」と声をかけてあげることが、とても重要なんじゃないかと思います。母の様な障害がある方や認知症の方は、元気な頃と同じように出来ないことが増えて、不安、焦り、混乱を抱えていますので、そんな時には「大丈夫」と声をかけてあげて下さい。

毎日が「母の日」

介護は工夫の連続です。私達家族は、母をどうしたら笑わせられるかなと、毎日が手品やサプライズを考えるようで楽しかったんです。まるで、毎日が「母の日」のようでした。
そんな母に、末期の子宮頸がんが見つかりました。今でも、そんな状態になるまで気づいてあげられなかったことを後悔していますし、夢でうなされます。言い訳でしかありませんが、当時は今ほど検診は重要視されておらす、病院には連れて行っていましたが、がん検診をたまたま２年あけてしまったんです。

本当は母を思い出すので、「がん」という話題に触れるのは辛いのだけど、早期に発見すれば命を落とすことのないがんで亡くなる人を減らしたい、私と同じ思いをして欲しくないと、長年、がんの啓発活動に取り組んでいます。
当時、がんは治療法がなければホスピスへと言われる時代でした。とりあえず、放射線の治療をして、二回くらい抗がん剤治療をしました。すでに手遅れであることは理解していましたので延命のためでした。ですが、３回目のときに、あまりにも母が辛そうなのと体力の消耗も激しく、もうこのままいくと母が死んでしまうような気がして、先生にそのことを伝えて母の代わりに私の意志で治療を止める決断をしました。1990年代ですのでまだ患者や家族が治療を自己決定する医療は行われていませんでした。
もし、あの時に私が先生に切り出さなければ3回目の抗がん剤もやっていたかもしれませんが、私の考えを伝えたら先生も同じことを思っていたと正直に話してくれました。ただし抗がん剤の治療を止めるということは、積極的な治療から看取りの治療へと切り替えるということ。
大きな決断でした。

今はがん治療も変わりました。生活に支障が出るような副作用も含めて、合わないと思ったら先生に相談すればいい。当時は先生に物申す時代ではなかったので、自宅に切り替えることを自分から言うのは珍しかったかもしれません。
しかし、ラッキーだったのは、家の近所に緩和治療科という本人が希望すれば、がんの治療から緩和ケアをするという、今思えば画期的なことを立ち上げた病院があったのです。しかもその病院は、くも膜下出血の時に母の命を救ってくれた病院でした。緩和治療科の先生や看護師さんのサポートを受けることができ母を我が家に連れて帰ることができました。

在宅は「覚悟」と「決断」の連続

「母を自宅で看取りたい」と在宅を選択しましたが、やはり厳しい現実が待っていました。
在宅は「覚悟」と「決断」の連続です。まずは「決断」。治療を決めていくことも、何もかも、すべての選択が全部命に直結しているんです。やるのも、やめるのも、すべてです。それを全部私が決めなければいけなかった。これは辛かった。
もう一つは「覚悟」。なにかあったときに、自分たちだけで看取るという覚悟ができるか。その２つがなければ在宅は厳しいと思います。また、当時、母の身体には、IVH、点滴、尿カテーテル、おむつ、人工肛門などがついていたんですよね。
安楽死のことを冒頭述べましたが、きっと母の状態は「賛成派」の方から見たら、「生きていても仕方ない」状態だったかもしれません。でも、私たち家族も、本人も、決してそうは思っていなかった。母は多分、自分が治らないとわかっていたと思う。けれど、それでも私達の前で泣かなかった。誰もが「生きていてほしい」と願っていたんです。だから、「生きていても仕方がない」なんて決めてしまってはだめなんです。

「在宅」だからできた、最後の外出

でも、繰り返すようですが、在宅は難しい選択を迫られます。病院との大きな違いは当然ですが自宅にはナースコールがありません。この状況に耐えられるかどうか。母が目の前で苦しんだとしても、病院のようにナースコールを押したらすぐに先生が駆けつけてくれるわけではありません。医療関係者を呼んだとしても、来るまでには時間がかかる。その間、家族で見守らなければいけない。これに耐えられるか。それが、「在宅」を選択するということなんだと思います。

ただ、辛いことだけではありません。最後の外出も、在宅だからできました。主治医の先生が私たちのしたいように、と言ってくれていたので、母の意思を確認して外出できました。帰宅の際、母ももう自分の状態が分かっていたのだと思います。しばらく家に入りたくないと言って玄関先から見えるなんでもない風景をいつまでも眺めていました。これはすべて家だからできたことだと思っています。

「他職種連携」の本来の目的

私が介護／医療関係者の専門家の方にお願いしたいのは、本人の「本音」を引き出してほしいということ。本当は家に帰りたいと思っていても家族に迷惑や負担をかけたら申訳ないと考えてしまい、家族には、いえ家族にだからこそなかなか本音は言い出せないものなんです。それは本人だけではなくて、家族も同じです。本人や家族が本音が言える環境をつくることが大切なのではと思います。
そして、それが多職種連携の強みの一つでもあると私は考えています。医者じゃなくても、歯医者さんでもいい。美容師さんだっていいと思うんです。「この人になら」と弱音を吐ける人を見つけたり環境をつくることが多職種連携だからこそできるのではないでしょうか。
全国各地で専門職の皆さんのお話を聴いていますが、なかなか多職種連携が上手くいっていない地域が多いと感じています。その理由ははっきりしています。専門職のみなさんは連携することを目的にしてしまっていて、「何のために」連携するのかという本来の目的を見失っているからです。
介護保険に地域包括ケアや多職種連携のことが言及されたのは2006年で13年以上も経つのに未だにうまく行かないという現状はかなり深刻です。繰り返しになりますが、目的は連携することではなく、“その人らしく”最期まで住み慣れた地域や我が家で暮したいという想いを叶えるために専門職は連携するのです。
「何かあったらどうしよう」と本人も家族は言語化できない「不安」でいっぱいになっています。だから、その不安を言語化してあげることも重要ですし、とにかく周りで支えている人たちが「大丈夫だよ」と言ってあげる。そして、家族がまだ起きていない何かに怯えなくてもいいように、医療介護の連携による切れ目ない支援が必要だと思います。

「看取り」は最期の瞬間のことではない

母の最期は、覚悟していた通り先生も看護師さんも立ち会わず、私、妹、父と叔母で看取りました。最期の数日は耐え難いがんによる疼痛が出てしまいモルヒネで意識をレベルを落としていましたが「聴覚だけは残っていますので話しかけててください」と看護師さんには言われていましたが、なかなかいざという時に言葉は出ないものです。大切な人に伝えなければならない大切な言葉は意識のある時に・・・いえ元気な時にきちんと言葉にして伝えて欲しいと思います。
本当に最期の最期に息を引き取る瞬間に、母はパッと目をあけて、父親の方を見てニコッと笑ったんです。とても穏やかな表情でした。不自由は多かったですが、不幸では絶対なかったと思わせてくれる笑顔でした。
多くの人が看取りとは最期の瞬間に居合わせることと考えがちですが、それも違うということを母から教えてもらいました。我が家の場合は、弟は仕事に出ていて間に合わなかったんですが、実は私達子供は母の命があと数日だと知っていましたがみな仕事を普通にしていました。母は夕方に息を引き取りましたが、私はこの日の早朝の番組を休みませんでした。最期まで私がテレビに出ている姿（すでに見ることは出来ませんでしたが・・・）を母に感じてもらいたいと思ったから。
「おはよう」「おやすみ」「行ってきます」などの何気ない会話も、これが母と交わす最期の言葉だと思うと全てがかけがえのないものとなりました。弟も当時救急隊をしていたのですが、毎朝家を出る時に母の血圧を測っていました。母の命の限りが分かった時から、私たちは日常の中でいつでもお別れできる覚悟をして弟は息を引き取る瞬間には立ち会えませんでしたが、まだ母の体が温かいうちに家に帰ってくることが出来ました。べッドと母の背中の間に手を入れて残された温もりを感じた弟もきちんと母を看取れたと私は考えています。
息を引き取る瞬間にこだわるのではなく、看取りは死ぬ前から当たり前ですが始まっているのです。そう考えると全ての人が限りある命を生きていますので、いつお別れの時が来ても後悔しないよう、日々を懸命に生きなければと思っています。

納得して、選択する

医療や介護は制度も充実しましたが、その分選択肢が多くなりました。10人いれば10通りのやり方や選択があるように、介護に正解はありません。介護施設にも本当に沢山の種類がありますが、一般の人にはなかなか区別がつきづらいのが現状です。小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護、サ高住などみなさんちゃんと理解できているでしょうか。
講演会の後にお話しを伺うと皆さん、本当に迷っていらっしゃるんです。
それは施設やサービスだけではなく、ケアマネージャーもそう。もし合わないなと感じたら変えても良いと思います。母の介護をしている時は介護制度がありませんでしたので、私自身が経験したのは医療ですが、「先生に任せなかった」ということは、今振り返って考えても大切だったと思います。決めるのは先生ではなく、本人や家族がどうしたいのか、ということをきちんと伝えること、つまり「納得して、選択する」ということなんです。
そして、そのためにも「切れ目のない支援」が必要なんです。

覚悟が決まれば、場所はどこでもいい

『病院で死ぬということ』という本があります。病院での、最後の救命医療はおかしいんじゃないか、ということを今から20年以上前に提案された本です。日本ホスピス緩和ケア協会理事を務めている 山崎章朗先生が書いた本なのですが、母が闘病中にたまたまこの本を手にとっていたから「病院ではなく自宅に母を連れて帰りたい」という想いを強くしました。
その後、20年経って私が主催する在宅医療の勉強会で山崎先生にお会いする機会があり、そのお礼を直接いう事ができました。そのとき、先生がおっしゃっていたことが印象的でした。
「覚悟が定まっていれば、死に場所はどこでもいい」と。我が家もホスピスになるし、施設だってそう、場所は全然関係ないと。
そしてもう一つ。「天国はあります。その天国には僕が逢いたい人が沢山います」大勢の患者さんを看取ってきた先生のこの言葉を聴いて涙を止めることが出来ませんでした。なぜ母との別れが今も悲しいのか・・・それはもう母には逢うことができないからです。ですが先生の言うように天国では逢いたい人に逢えると考えれば、母はきっと先に逝った祖父などに逢えているかもと想え、「死」が少し怖くなくなりました。感謝です。

「地域のつながり」が重要になる

高田馬場にある民生委員さんのお家に知り合いとたまにお邪魔するんですが、もともとお米屋をされていたそうで、いまも玄関がいつも開いていて、お昼時になると、近所の未亡人ばかりが集まって、勝手にお惣菜やご飯を持ち寄って、あっという間に豪華なテーブルに。勝手に集まって勝手に食べて、片付けて勝手に帰る（笑）。

もちろん私は最年少ですが、ここでは死もタブーではないんです。何回かお食事した方が別の時にいらっしゃらなくて、どうしたのかなと思ったら、隣でみなさんが「彼女は大往生だったわねえ」という話をしている。そんな話を明るくできる、こういうコミュニティが都会にあるんです。つまり、血の繋がりじゃなくて、地縁という「地域のつながり」がこれから大切だなと思うんです。
ご自宅じゃなくても、こういう場所、居場所が地域の中にあるかどうか。つながるためには「場所」が必要だと思います。介護施設が人が集う居場所になっても良いのではないでしょうか。デイサービスがお休みの土日や有料老人ホームでも空いているダイニングを開放するとか工夫はできると思います。すでに地域の中にある介護施設や介護事業所は「人」を繋ぐ「点」となれるはずで、まさにここ「ロイヤルぷらっとフォーム」はそういう「場」になれると思います。
大介護時代では地域の力が試されます。介護施設で働いている方と話をする時に「みなさんは介護施設や株式会社○○」で働いているのではなくて、「『地域』で働いているんですよ」とよく言うんです。決して、建物の中だけで働いているわけでもありませんし、これからのケアは建物の中だけで完結するものではないはず。地域に開かれたホームが生き残ることは間違いありません。介護施設で働くみなさんも地域の方、周りの方たちと交流を持ち繋がって下さい。そして、困った時は地域の人達の力を借りるという発想の転換をしてみて下さい。
一般の人も「我が家」にこだわる必要はないんです。たとえ病院や施設だとしても、きちんと“人”を見られる医師、看護師、介護職などがいる地域の施設や病院を納得して選択できたのならば、それも我が家と考えていいのではないでしょうか。
地域全体を我が家と考えると大切なのは「場所」ではなく「人」だということが分かります。そして、そんな「人」を大切にするために、ここにいらっしゃる専門職の皆さんも、ぜひ現場で感じているおかしいことはおかしい、と言葉にしてください。「もし自分だったら」どんなケアを受けたいか？どんな施設で暮らしたいかと考えたら答えはそれほど違いはないはずです。「当たり前のことを当たり前に」すべての人にそんなケアが届けられるような社会にしていけるよう、共に歩んでいきましょう。